2012年5月30日水曜日

チェンバロ

チェンバロ

日本では「チェンバロ」という呼び方が一般的だが、
これはイタリア語であり、英語では「ハープシコード」、
フランス語では「クラヴサン」と呼ばれている。
音の出るしくみはピアノとは異なるが、ピアノが登場する以前、
17~18世紀のヨーロッパで広く使われた鍵盤楽器、
それがチェンバロだった。


一段鍵盤と二段鍵盤
チェンバロは、弦を叩くのではなく、引っ掻いて音を出す。
もっとも古い記録としては、14世紀の史料に
「クラヴィチェンバルム」の名称が記されている。
この楽器は、16世紀初頭のイタリアでその原型がほぼ確立され、
その後アルプスを越えると、さまざまな改良が加えられた。
ボディも薄く一段鍵盤が主流だったイタリア製に対し、フランドル、
フランスでは、二段鍵盤の楽器が生み出された。
この結果、音域が拡張され、フォルテとピアノの音量を
使い分けることも可能となる。
また弦をはじく爪の改良や、音色を変えるレジスターの発明によって、
音色が多様になっていった。
こうした改良を経て、生産地によってそれぞれ固有の特徴が生まれた。
たとえば、ボディの重厚なジャーマン・タイプは、渋みのある音色だが、
フレンチ・タイプは、柔らかく絹のような音を奏でる。
クープランやラモーが作曲したフランス・クラヴサンの美しい諸作品は、
こうした楽器の隆盛とともに誕生したのである。