2012年5月30日水曜日

クラヴィコード

クラヴィコード
現在、にわかに注目を集めるクラヴィコード。
この楽器は、18世紀の作曲家たちにとって
もっとも身近な鍵盤楽器だった。

甘美で繊細な音色
「きわめて洗練された趣味の演奏をするとき、
クラヴィコードは、一番の支えになってくれます」(C.P.E.バッハ)、
「甘美で、魂のどんな息づかいにも敏感なクラヴィコード」(ショーバント)。
クラヴィコードは、フォルテピアノの台頭とともにしだいに忘れられていったが、
バッハ・ファミリーも、ヘンデルも、
モーツァルト父子も18世紀の音楽家たちの誰もが
この楽器を愛し、もっとも身近な鍵盤楽器として日々演奏していた。


音の陰影を表現できる楽器
クラヴィコードは、可動式の駒をもつ中世の単弦楽器、
モノコード(一弦琴)を発展させた楽器である。
とてもシンプルな構造で、鍵盤を押すと、その先に付けられた
タンジェントと呼ばれる金属ピンが弦に触れ、音が発せられる。
ただその音は、驚くほど細く、現代の演奏会場では
ほとんど聞き取ることができない。
しかしその反面、鍵盤を押す指に弦の感触が伝わるので、
力を加減してヴィブラートをかけたり、強弱の変化をつけたりできる。
音の陰影を表現するのにもっとも適した楽器といえるだろう。
自らが音楽を楽しむために、あるいはこの時代の音楽を実感するために、
最近クラヴィコードの愛好者が、ピアニストの間でも増えているようである。