2012年5月31日木曜日

繊細な響きを求めて2

繊細な響きを求めて

ハンマーの改良
ちょうどこの時期のパリで、プレイエル、エラールと
並んで人気だったのが、ドイツ出身の製作者アンリ・パープのピアノである。
現在では、ほとんど忘れ去られているパープの数々の発明のなかで、
彼が弾力性のあるフェルトを初めてハンマーに使用したことは見逃せない。
それまでの羊や鹿の皮(ウィーン)、綿や羊毛(イギリス)で
覆ったハンマーと比べて、音色に硬さがなくなり、
現在われわれが耳にしているピアノの音により近いものとなった。


リストの影響
ところで、先のショパンとは対照的に、大ホールで大勢の聴衆に向かって
演奏することを好んだのがリストである。
彼は、演奏家としてエラールやブロードウッドを弾いていたが、
晩年になると、さらに次世代のピアノにも触れており、
ベヒシュタイン(1880年製、ベルリン)や
スタンウェイ(1882年製、ニューヨーク)も所有していた。
カール・ベヒシュタインは、1856年、リストのリサイタルを聴いて驚愕し、
このピアニストの力に耐えうる楽器を作ろうと決心したのだった。
しかしこれは、ベヒシュタインに限ったことではなく、リストの演奏は、
19世紀後半のドイツの製作者たちに大きな影響を与えたのである。