2012年6月2日土曜日

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調


ベートーヴェンとピアノ曲

ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調op.57<熱情>
ピアノの可能性を拡大させた情熱的なピアノ・ソナタ

ウィーンで活動をはじめて10年ほどが過ぎ、
ベートーヴェンの名はヨーロッパ中に知れ渡っていた。
この曲を作曲する直前には、フランスのエラール社という
ピアノ・メーカーから、最新型のピアノを贈られる。
それは非常に大型で重い楽器であったが、
それまでのピアノに比べて音域が広かったとされる。


それゆえ、この曲を書く少し前から彼もピアノ作品で
使われる音域はいちだんと広くなった。
ベートーヴェンが新しい楽器の可能性を限界まで追求して作品に
反映させていった好例のひとつであろう。
<熱情>という表題はこの曲の第1楽章、
第3楽章に聴かれる情熱の嵐が吹きすさぶような曲調から、
楽譜の出版社が出版の際に付けたものである。
暗く静かに地の底からわき上がるように開始される第1楽章は、
起伏の豊かな音楽が情熱的に演奏され、
ゆったりと穏やかな第2楽章を経て、
激しい和音の強打で開始される第3楽章は
めまぐるしい旋律の動きが奔流のように荒れ狂う。